ヨノナカ実習室 実習予告と記録

調理実習や木工実習のように、対話や表現や交流の実習を行う場所「ヨノナカ実習室」の、実習予定や記録をお知らせするページです

実習記録「南方開放区」8月31日

バングラデシュ語を使うために、人がたくさん死んだ」
バングラデシュからの留学生が、日本語で、教えてくれた。

 

「田」「ふるさと」なぜか、伝わらない。
英語で言い換えてみる。伝わらない。
日本語が、よく伝わる。

 

「光」を「どんなことでも一所懸命がんばる」というカンボジア語で表現する。
「凪」を「静かな海」というインドネシア語で表現する。

 

一緒に考えた。
言葉の意味を、どうやったら伝わるのかを、目の前の人と一緒に、ひたすら考えていた。
正確な翻訳、というものではなかった、と思う。
両方が歩み寄って、手が届いて、一緒に考えた人たちで納得して、そして喜ぶ。
読めない文字で書かれた名前を、嬉しそうに皆が見つめている。
そして、読んでみたら発音が下手で、笑われる。それが、また、楽しい。

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時間が来ていることを知らせても「全員の名前を全員の言葉で書くまで待って!」

松樟太郎さんの『究極の文字を求めて』に出てきた文字が、目の前で、筆記される。
ああ手書きには、プロセスがある。白い紙に字がニョロニョロと伸びていくプロセスがある。サラサラと書いている本人の、この字を書けるようになるに至ったプロセスがある。バングラデシュの文字やカンボジアの文字の書き順は、あまりに複雑。「薔薇」レベル。

 

「春の花」という古い古い歌を、探して聞かせてくれる。
古い古い歌を、若い人が歌っている声が、スマホから流れる。
インドネシアバングラデシュと日本の若者が、耳を澄まして聞いている。
スマホもSNSも、悪いことばかりではない。

 

「イン・シャー・アッラー」活字の通りに読んだら、「発音が悪い~」と、ムスリムのみんなは、爆笑。それもまた、「神が望みたもうたならば」
約二時間、場が静かになることは、ほとんどなかった
しあわせな出会いを目の当たりにして、神様に感謝したくなる

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 南方開放区、第一回のテーマは「みんなのことばでこんにちは」。10名の留学生が四か国から、8名の岡山県代表(社会人、大学生、高校生)が日本から参加。
 自己紹介がてら、「輪になって向かい合って、挨拶」するだけの時間のはずが、聞いて話して、止まらない。インドネシアの見所までちゃっかり聞き出した日本代表主婦がいたり、メンバーチェンジに気づかず話し続けるペアがいたりした。
 お互いの文字でお互いの名前を書きあう場面。一緒に考えるメンバーたち。世の中の難しい問題は、こうやって一緒に考えることが大切なのではないかと自然に思える時間だった。

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一緒に読む時間は「イスラムが効く」(中田考内藤正典著)を、つまみ読み。この本を、実際にムスリムの皆さんと一緒に読むことを、とても大切だと思って企画した。短い時間ではあったけれど、真剣で誠実な時間となった。
 「帰属意識」という言葉への引っ掛かり。「イン・シャ・アッラー」が出てきた瞬間の、ムスリムのみんなの「そうそう!それそれ!」という納得の空気。その後しばらくは、「イン・シャ・アッラー」談義。普段どんな場面で使うかを聞くと、一日に何度も何度も使う言葉で、神様とのつながりが血肉となっていることが自然に伝わってくる。「ムスリム以外の人が使うのってどうなん?」という問いには、「わかんない」という真っすぐな答え。それぞれの宗教や文化での、同様の言葉や所作を教えてもらう。それぞれが、それぞれである。

 

 時間はあっという間。お祈りの時間が来たこともあり、会は終了。しかし、若い人たちのポケットからスマホが登場し、彼らは彼ららしいつながりを楽しそうに作る。最後はムスリムの女性のおしゃれに皆で見惚れる。特にヒジャブ、色、素材、柄、巻き方、留め具、服との組み合わせ、実に多彩で上品で、おしゃれ。次回は、「衣食住」のどこから攻めるか、楽しみで仕方ない。

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 目の前にいる。はっきりと、そこにいる。

 存在を想像しないとき、私たちは、伝わったか伝わっていないかを、慎重に繊細に探っている。「伝える」ではなく「伝わる」が大事、とはワークショップデザイナー三宅典子先生の言葉。目の前にはっきりいる相手に対して、脳みその中では、どんな表現が必要か、想像力のようなものをフル稼働させている。

 前日、スロウな本屋さんのイベントで瀬尾夏美さんが教えてくれた、聞き書きの時の慎重な一人称の表現、のようなもの、を思う。「翻訳」は、単語レベルで、慎重な一人称を触発される行為かもしれない。

 この企画は、フラダンス家守さんのまっすぐな情熱と具体的な問題意識と、人の出会いを信じる心が形になったものです。留学生の皆さんは、希望して岡山に来たとは限らない、それでも、せっかくご縁があって岡山に来たのだから、豊かな時間を過ごしてほしい、ステキな出会いを経験してほしい、人生の中で岡山にいたことを幸せな時間と思えるようであってほしい、そんな思いを持つ人が、こんな場を作るのだ。

 

「ヨノナカ実習室」
調理実習、木工実習のように、
対話や表現や交流の実習活動のためのスペース
  〒700-0807 岡山市北区南方二丁目9の7
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以下、やや変更もありそうな、予定です。

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