いろりを焚いて 山尾三省
いろりを焚いて
とろとろと ジャムをこしらえる
リンゴジャムを こしらえる
高松の
原子力発電所を止めさせる集会で
出会った
ひとりのりんご作りが送ってくれた その大切なりんご
新しい人間の文化を
なをも
なをも夢見つつ
大地は神と 確信を深めつつ
山は神と 確信を深めつつ
リンゴジャムを こしらえる
いろりを焚いて
とろとろと ジャムをこしらえる
一九八八年の
リンゴジャムを こしらえる
『五月の風』野草社2019
詩の言葉は、行動に影響を与えてくる
数日前に友達が重たい袋を下げてりんごを持ってきてくれた
それをどうやって大切にしたらいいだろうかと
作ったこともないリンゴジャムを作ることにした
クックパッドを検索して作り方を調べてガスコンロにティファールをかけて
ぐるぐるぐるぐるかきまぜ続けた
初めて作ったのに
知っている匂いがした
重い袋にリンゴを友達が持ってきてくれたから、大切にしたいと思った
この詩を知らなかったら、リンゴジャムをこしらえることは、なかった
そのこと自体に、感謝している
詩の言葉、歌の言葉を、出来るだけ提示していこうと思います
おそらく詩の言葉、歌の言葉が、どこかに宿っていて、ピンチの時にふと救ってくれると思うからです