ぼくが歌えなくなって
石のように
地に沈んでいると
その頭上で
ヤマガラが啼く
ツツピー ツツピー ツツピー と
澄みきった いい声で啼く
人には誰でも 耐えねばならぬ時がある
その時には
苦しみの石になって
岩になって
ヤマガラが啼くのに まかせるほかはない
ツツピー ツツピー ツツピー と
澄んだ声で
ヤマガラが啼けば
それが
耐えねばならぬわたくしの
いい声の 歌なのだ
『火を焚きなさい』野草社2018
庭に、何か、鳥がいる。
ピーピーないている。
ゆっくり近づくと、干していた棉の実で遊んでいる。
人と会う期待が、残念な理由で延期になった所だ、うれしいではないか。
ドアを閉める音に驚いてどこかへ行ってしまった。
ああ、ああ
ずっと鳴きながら、声を上げながら、なんとも愉快に、棉で遊んでいた。
また来てください。
「元気ですか?無事でいてください」
というメールが届く。心が救われる。
鳥の写真を送った。
返事には「ヤマガラ」と、夫さんの見立てがあった。
「ツツピー ツツピーと、春はよく鳴くよ!」との説明。
ああ、それは
詩の言葉じゃないですか
この前の夏に、恥ずかしがりながら詩を読んだ時の、詩の言葉が、ずっと心に残っていることに、こうして気づかされます。
イギリスでは、社会が不安定になると、詩人の発言に皆が注目するそうです。
「石のように 地に沈んでいると」
という言葉に、夏の私は、ある時期の自分のことを重ねていました。
今日、快晴の空の下で、もう一度この詩を読むと、なぜか涙が出そうになります。どうしてだろう。その理由のひとつは、間違いなく、この詩との出会いに対する感動です。
今、この詩を、声に出して読んでしまったら、最後まで声を出して読むことができそうにありません。しかるべき時が来たら、「ひとり音読部」に、この詩で参加してみたいと、恥ずかしがり屋のくせに尊大な志を、打ち立てました。
よろしければ、一緒に、音読部に参加しましょう。