ヨノナカ実習室 実習予告と記録

調理実習や木工実習のように、対話や表現や交流の実習を行う場所「ヨノナカ実習室」の、実習予定や記録をお知らせするページです

赤子見るべし さわるべし  3/13「日本語のために」読書会

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池澤夏樹個人編集・日本文学全集30『日本語のために』を、国語の時間に居眠りこいてた皆さんで読んでみる読書会、第二回にして、我々の目の前に「漢詩・漢文」がそびえ立つ。居眠りの聖地にあらずんばあらず。漢字だらけの紙面を前に、すやすやと寝息が聞こえんとす。これまさに春眠暁を覚えず。

 

ところが、です。

この会は日本文学の研究会にあらず。居眠りこいてた人間どもの集いなれば、漢詩と漢文を自由に本気でこねくりまわすにしくはなし。

ということで、です。

 

まずは、気になったフレーズを(理解度は不問)言い合ってみる。

 

「騰騰任天真」

「此日送君帰絶境」

「残粧自懶開珠匣」

「一場春夢不分明」

「雲連比叡三千院

 なんか、かっこいい。

「人間徒多事」

 人の世はいたずらに、お節介という訳し方!

「青春二三月」

 人生を24時間としたら、まさにこれが10代!(byいなかっぺい氏)

「楚台応望更応攀」

 ちょっと、禁欲しすぎでこんなことに??

 

特に「楚台応望更応攀」の訳が話題になりました。

女体視るべし のぼるべし

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無責任に感想を言い放った後は、漢詩を「文字の紙芝居」として見ながら、自由にイメージをふくらませてみました。

「古寺」

「門」

「向」

「人」

「藤蘿」

「四面深」

「簷花」

「経雨」

「落」

イメージした花、色、雨の様子、蔓草の生え方、自分の立ち位置、それぞれに異なる景色を描いたことがわかりました。

 

 

この日のメインイベントは「井伏鱒二になる」企画。

 

花発風雨多 人生足別離

 

井伏鱒二が訳したことば

 

「花ニ嵐ノタトヘモアルゾ

 サヨナラダケガ人生ダ」

 

のイメージで、自分の言葉にしてみました。

 

一部を紹介いたします。

 

「正知百年忙」

  年休一日と半日くらいは取りたい!

 

「吾当死処吾当死」

  『いつやるの?今でしょ!』を忘れずに

 

「人生非金石」

  人生、生きてるだけで丸もうけ

 

「唐宋竟難尋」

  昔の光、今いづこ

「英雄一去江山在」

  猛き者もついにはほろびぬ

  でも「国破れて山河あり」だよ

 

「遙望微雲洞裏帰」

  『天つ風 雲の通ひ路吹き閉ぢよ

  をとめの姿しばしとどめん』って

  言われても帰るよ、疲れたし

 

「生涯懶立身

 騰騰任天真

 双脚等閒伸」

  生涯、立身出世に尽くさずして

  天に任せて来たならば

  あとは足を伸ばして

      世の中をみるばかり

 

「生涯懶立身

 騰騰任天真」

  ニートで何が悪いねん

  このままぼんやりしたいねん

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同じ詩句が別のことばになる!おもしろい!

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「玄冬十一月 雨雪正霏霏

 千山同一色 万径人行稀

 昔遊総作夢 草門深掩扉

 終夜焼榾柮 静読古人詩」

   原発の夢は総て夢と作(な)り

   あの日、終夜榾柮を焼き

 

海門潮落夕陽空」 

  しぼったばかりの夕陽の赤が

  水平線からもれている

 

さて、富士正晴一休宗純を訳すと

 

  女体視るべし のぼるべし

  夜半のベッド 人恋しげな顔がある

  花はほころぶ一茎 梅樹の下に

  水仙は腰の間をめぐるなり

 

となるのですが、元の漢詩はこちら

 

楚台応望更応攀

半夜玉床愁夢顔

花綻一茎梅樹下

凌波仙子繞腰間 *繞は別の字

 

Kさんの力作をどうぞ!

 

 赤子見るべし さわるべし

 夜中の布団で騒ぐ君/甘える君

 乳首は切れて乳は出ない

 ああまたおむつが濡れている

 

 

わずか百年前の日本語話者たちの「想像を絶する漢文力」におののきながらも、かっこつけて漢文口調を遣ったりしてたんじゃないの~?などと言いつつ、ふとした漢文口調にかこつけて、急に「サイボーグ009」の歌を歌い出す私たち。

 

中国の古い音で聴いてみたいねえ、美しかろうねえ。と夢も見る。

 

ひとりではきっと読めなかった第二章でした。そして

みんなで読むととても面白い本です。

www.kawade.co.jp

 

次回は、4月17日(土)14時~16時

【第4章 キリスト教の文体】を中心に話をしましょう。

 

 興味のある方は、ヨノナカ実習室(担当スミ)まで

 メール ⇒ wassignol.297@gmail.com

 

ななんと、次回は心強い「もうやっこ」のあの方が、オンラインで私たちを朗らかに励ましてくれる予定です!

yononaka-jsh.hatenablog.com

第3章の仏教の文体も、横目で見ておくと面白いかもしれません。

 

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