ヨノナカ実習室 実習予告と記録

調理実習や木工実習のように、対話や表現や交流の実習を行う場所「ヨノナカ実習室」の、実習予定や記録をお知らせするページです

よみものピクニック『ふたりはいつも』12月7日

人の声に耳を傾けることが、私たちは好きなのだ。
そうとしか思えない。

 

『ふたりはいつも』のワークが終わった後、なぜか『んぐまーま』を丸丸一冊、その場にいたみんなで声を出して読み切ってしまった。

だれかが読もうと言ったわけではない。

お迎えが来て、さあ帰ろう、となったその時。

積んであった絵本の山をそれぞれが手にしては、「これ好き」「これうちにある」開いて読み始める。

 

その時だった。

 

開いたページに「うやむやむ なむばなならむ」の文字。

みなさん、声に出し始める。なぜだろう、声をそろえて。

どうして声をそろえたくなるのだろう。

一緒に息継ぎをする。文字通り、息が合う。

目は文字に集中している。

声に耳を澄ます、美しい時間だった。

 

『ふたりはいつも』アーノルド・ロベール 作/三木卓

『んぐまーま』大竹伸朗・絵/谷川俊太郎・文

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帰る準備万端なのに『んぐまーま』に集合する人たちと、名前シール作成に必死な人たち。

準備の段階から「がまくんとかえるくん」は、声に出してみんなで読みたいと思っていた。ところが、集合した人たちは「音読やだ。黙読がいい。ひとりで読みたい」とのこと。

そんな人たちが、である。

この本の底力に驚かされる。企画、選書はスロウな本屋さん。さすが、のひとこと。

 

slowbooks.jp

 


〈そりすべり〉の好きな場面を、爆笑と共に紹介し合う。
いくつかの場面について、書かれていることを探したり、書かれていないことを考えたりして、お互いに伝えあう。

うまく聞けないときもある。人の言葉はちゃんと聞こう。そしてくりかえす。

そんななかで、お互いの声に耳を澄ます。

 

人の声に、私たちは耳を澄ますのが、好きなんじゃないか。

しかし、いろいろな場面で自分の声を人が聞くことに躊躇するようになる。

 

思いだしたことがある。ずいぶん以前に、教室に行かずに自分の部屋でずっと小さく座っていた高校生が、ふと言うのだ。「英語の発音を笑われて、恥ずかしくて、もうダメだと思った」小さな声でぽつりと言った。スポーツ万能でちょっとステキな若者は、ずっと部屋から出られなくなっていた。ふとんを引きはがして、足を引っぱって部屋から引きずり出して、一緒に学校へ行ったこともある。小さな声を聞いたとき、この言葉を聞かずに引きずり出したことを心の底から詫びた。

 

たとえば「白」から連想するものを、せーので声に出す。当然、人の声は聞こえないから、一人ずつに言ってもらう。聞こえるから、聞こうとする。聞きたいのだ。そして、伝えたい。聞いてほしい。

かえるくんは、冬がステキだと、がまくんに伝えたい。

 

ステキな冬を伝えるために、オーバーや帽子や襟巻をがまくんに支度したかえるくんの優しさは、あたたかい。それでも冬を嫌がっていたがまくんが、ついに冬を世界一だと言ったのは
「ふゆはおもしろいから」
「そりにのったから」
「かえるくんがさそってくれたから」
「きみがいっしょだから」

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二回目の参加者は、ピクニックグッズのレベルもかなり高い。

だんだん言葉が自分のものになっていく。

 

続いての〈クリスマス・イブ〉で、がまくんは、目の前にいないかえるくんのことを考えている。
「しんぱいしとる」
「やさしいからじゃ」
「そうぞうしとる」
自分の言葉で説明をし始める。問いかけたときに、答えるまでの時間が少しずつ、長くなる。言葉を探しているように見える。

 

今、目の前にいない人のこと、考えられる?大人の賢しらな愚問である。みな、ほんとうに嬉しそうに、今、目の前にいない大切な人のことを我先に語り出す。自分よりも年若い人のことを彼らが語ったことも、忘れがたい。

 

「あの壁の絵の変なおじさんが、自分のことを穴に落ちとるかもってしんぱいしてくれとったら、どうおもう?」
人生を試されているような質問も飛び出す。

 

最後に、ふたつのお話の重大な違いを聞いてみた。
「季節が同じだけど、あったかいのと寒いのと、違っていくのが違う」
「かえるくんが、がまくんのことを考えとった話と、がまくんが、かえるくんのことを考えとった話」
「がまくんはベットから出るのも嫌だったのに、かえるくんのことめっちゃしんぱいしとるから、はだしですごい勢いで出かけとる」

一同、納得。
特に最後のがまくんの変化に気づいた瞬間、それぞれの言葉で皆が顔を見合わせて納得。

 

わずか90分。かえるくんからのプレゼントは時計だった。ここの時計も時間に音がならなかったから、壊れとる、ということで、現実の世界におかえりなさい。

 

前回は、最後に「孤独で、孤独ではない」ひとりで読む時間が印象的だったが、今回は、お互いの声に耳を澄まし、息を合わせて声に出して読む姿が、驚きと共に心に残る。

 

「みんな みたよ
 きみたちは みんな とても うまかったよ」

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お迎えが来るよ~の声にもぬけの殻の瞬間と、毎度おなじみ座布団連結寝転がり読みの人。

 

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