ヨノナカ実習室 実習予告と記録

調理実習や木工実習のように、対話や表現や交流の実習を行う場所「ヨノナカ実習室」の、実習予定や記録をお知らせするページです

よみものピクニック『くまの子ウーフ』

孤独で、孤独ではない、読書の時間。

絵本の次の読書、考えて思い出して聞いて相談して、読んで、また読んで、たどり着いたのは「ひとりで読む自由」
その時間を、皆で、一緒に、作って、それぞれ楽しむ、これが「よみものピクニック・やわらかめ」では、実現されました。

 

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「読む時間」
皆、いい顔をしている時間
他の人には、共有できない、大切な時間
だからこそ、皆と、もう一度、出会い直せる


皆が持ってきてくれたピクニックグッズは、敷物、水筒、バスケット、ごみ袋という名の宝もの入れ。大人の想像は即物的で、ごみ袋と呼ばれる袋に宝ものが入って帰ってくることを想像もしない。


『くまの子ウーフ』の表紙をめくると、ウーフが野原に寝転んだ絵が広がっている。
「寝てる」
「ころがってる」
「空を見てる」
「雲を見てる」
「ちょうちょを見てる」

ウーフがうなること、最初に言葉だけ読んでもわからなかったことが、途中でわかる
「あ!いまわかった。うなるんじゃ」

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何でできてるの?持ってきたバスケット、インスタントやきそば、そこにあるもの、似てるけど何だか違うもの、水筒とコーヒー豆の缶を触って
「なんかちがう」
葉っぱ、茎、枯れた葉っぱ、土、何でできてるの?
「水」
「栄養」
「枯れた葉っぱの栄養が、緑の葉っぱに届いてる」
目に見えないものがどんどん言葉になっていく

「ウーフはおしっこでできてるの?」

「えー」

ここの先のやりとりは、ここにいた皆の秘密なのだ

 

「ウーフにはウーフにしかできんことがあるし、ツネタにはツネタにしかできんことがある」
「そうじゃ」
「かんろく、って何?」
「おふろはいいけど、頭あらうのは、いや」
一時間前には学年もモジモジしか教えてくれなかった人が、ウーフと自分のことを一所懸命訴えてくるではないか。ウーフの魅力おそるべし。
皆さん、書いていないことを言葉にする。想像して、言葉にして、伝える。伝わる。


いろんな学年の人がいました。
先輩小学生は、初心者小学生の音読にやさしくさりげなくアドバイスをくれました。
そのさりげないやさしさに、計算高い中年は、背筋の伸びる思いになる。


今回のワークの最後は「ちょうちょだけに なぜなくの?」を、ひとりで読むワーク。ここは大人もハッとさせられる強い章段。今日一日の「読む」が明日につながるかどうかの試金石。「自分の好きな場所で好きに読もう」聞くが早いか、全員がてんでまんでに座布団を小脇に抱え、胸にウーフを抱いて居心地の良い場所へ。静かな時間が流れる。

  

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この時間を、皆で作れたら、と思っていた、そういう時間だった。
お迎えのおうちの人に
「家に帰って続き読んでいい?」と見上げた人。
それなんですよ、それなんです。

 

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90分、本は一冊。
読めるのか?途中で飽きるんじゃないのか?何人泣きだすんだろう?
すべてが杞憂に終わったのは
参加者の皆さんの、ゆたかな想像力と、やさしさ。


本を選んでくださった、スロウな本屋さん。
最後を「好きな場所にしたら」と言ってくださったのもスロウな本屋さん。

 

ヨノナカ実習室のベストポジションで、小さな人たちが真剣なまなざしでウーフを読んでいる、あの時間。
そういうものを

これから作っていくのだと

ただただ

そう思う。

 

 

* 写真、記録 オクダ熊悶さん やさしい写真を、ありがとうございました