神谷書庫の入口で
棚を見上げて
背表紙に並ぶ機関誌の名前を
ただただ見上げていました
長島愛生園に、神谷書庫があります
歴史館見学の折に、「神谷書庫もありますよ」と声をかけていただいてから気になっていました
機関誌『愛生』編集室の駒林さんのお話を聞いて、本棚に並んでいるのがどのような本なのかを知るにつれ、正直に言えば、足がすくみました
「神谷書庫ができあがった時、中に何を入れるかは編集部に任せると言われて、先ず各園から発行された機関誌を入れることに決めた。本は長期間かけて作り上げていくから格好良く作ることができるけれど、機関誌は短い時間で作らなければならないから、その時々の書き手の気持ちが吐露されている。神谷先生がお知りになりたいのはそこだと思った。編集部員には集め屋さんがいたから、全国の療養所から送られてくる機関誌はほぼ欠かすことなく残されていて、ダンボールに入れられたままになっていたのを製本して入れることに決めた。神谷書庫には神谷先生の蔵書があると思って訪ねて来られる方が多いけれど、そうではないから「神谷文庫」ではなくて「神谷書庫」」
私は、神谷書庫が建った当時「愛生」編集長をされていた双見さんから、何度もこのことを聞かされました。
「神谷文庫に近づいた神谷書庫」(『愛生』通巻 八一八号)駒林さんの文章より
実は、「神谷文庫」だと勘違いしていた私でしたが、ここは「神谷書庫」であり、ここが「書庫」たるゆえんをお聞きして、深く深く反省しながら、こういうことはちゃんと知っておくべきだとまた学んだのでした
大正から昭和、平成を経て今も編集が続いている機関誌が壁を囲んでいます
『愛生』編集の仕事では、原稿不足に困ることがないそうです
本になると、ととのえちゃう、整え過ぎちゃうこともある
機関誌は、かっこつける時間がなかった言葉が、文字になっている
駒林さんの言葉は、まっすぐにこちらに届く言葉でした。
和公さんや双見さんと『愛生』を編集してきたこと、いつも、あたえてもらってて
校正ミスをしちゃうと、すごく落ち込むんだけど、この仕事は本当に自分にとって、大切な、いい仕事だと思ってて
ご本人は、謙遜なさっていましたが
もっともっとお話しを聞きたいと思いました
宮古の機関誌「南静」創刊号の巻頭言に出くわしました
論理的な目的があって、書くのではない
自然的な欲情、情感の鬱積の結果として、書かれた文章が生まれるのだ
という意味に、私は受け取りました
今、この言葉とめぐり合えました
この書庫には、このような言葉が
大切に編集され、それぞれの居場所で、読む人を待っています
*「神谷書庫」
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公開時間 平日10:00~16:00